帰宅難民
たまたまこの本を3月10日に購入し同日の夜中に読んでいました。そして夜が明けた11日14時48分、私は汐留の超高層タワーの足元に立っていました。
突然足元のアスファルトが隆起する様な感覚を覚え、目の前で行われている道路工事の振動にしては妙に大きいなと感じながら、重機の様子を眺めていました。
すると、次第に重機自体が上下に大きく揺れ始めた光景を見て漸く、”地震!”と認識。
バリバリと言う音を耳にして背後の高層タワーを振り返ると、見事に弓なりになりながら振幅しています。巨大な異音と共に外壁のタイルやガラスが軋んでいる状況を知り、血の気が引きました。
頭上からこれらの物が降り始めれば一瞬で絶命。周囲を見渡し、咄嗟にマンションの駐車場ゲートに飛び込みました。
そこには新聞配達員、ヤマト運輸の配達員が居たので、お互い声を掛け合って身の安全を図りました。「これって巨大地震だよね?」「今TVをモニターしているのですが、東北地方が震源の様です」「ここは安全?」等々、知らぬ者同士ですが実に心強い。
そして更に地震は強くなり、天井に吊られているダクト配管が物凄い音を発しながら、吊られている金物の中で暴れまわります。こちらも落下してきたならば命に関わるため、壁際に身を寄せると構造梁のモルタルがバリバリと剥がれ落ちて来ました。
これ以上逃げ場が無い以上、手持ちのアタッシュケースで頭を守り、このモルタルを浴びる事になりました。これまで有事の際に役に立つと公言していた、同僚から不評のアタッシュケースが現実に役に立ちました。
これ程大きな揺れは当然経験したことなど無く、汐留の新しい超高層タワー群が耐震、免振構造によって見事にしなって揺れを吸収する姿を見られた事は実に貴重でした。シュミレーションでしか見られない物が目の当たりに出来た訳ですから。
そして、揺れが納まってからがまた大変。
この揺れでは電車は全線停止であり高速道路閉鎖も間違いない。何処に帰る?会社?自宅?どうやって?
運悪く多大な荷物を持っていたため選択肢としては事務所に帰るしか有りません。
弾き出した答えは「タクシー」。駅前では拾えないと判断して、反射的に幹線道路に飛び出して偶然走って来たタクシーに乗り込みました。
興奮冷めやらぬ我々と運転手さん。とにかく新宿へ向かって下さいとお願いして走り出すも大渋滞。汐留~新宿間で1時間以上かかり5000円以上の料金が掛りましたが、状況を考えれば安い物です。
私の事務所は新宿の超高層タワーの最上階付近に存在しますが、ロビーに行くと黒山の人だかりで皆TVモニターに釘づけ。初めて現実に何が起こっているのかを知る事となりました。
燃え盛る石油貯蔵庫、津波に押し流された家々に驚愕するばかり。現実に起こっている事と認識出来ず、ただただ画面を眺めるだけ。
エレベーターは当然停止している為、非常階段で50階近い事務所まで10kgを超える荷物を二つ持って延々登ってきました。結局この階段は二往復しましたが、普段自転車で鍛えた脚力が初めて役立ちました。
その後もJR、私鉄共に動かず事務所待機。事務所を出たのは深夜1時半。西武線を乗り継ぎ、辿り着いた自宅到着時間は4時半を回っていました。当然疲労困憊です。
甚大な被害を出した今回の震災は東京の脆弱性が露わになりました。
飲食店はほとんど閉鎖、コンビニの食料は瞬く間に売り切れ、行き場を失った帰宅困難者が町に溢れました。死傷者が出ない中でのこの混乱を踏まえると、関東大震災では被爆者が溢れる広島と類似される状況となるでしょう。
携帯が役に立たず安否確認が出来ない、職場での食料の確保等、今回の体験によって実に多くの物を得ましたので、この書を再び読んで新たなる危機に備えようと思います。
東北に知人親戚も多いのですが、今回の震災によってお亡くなりになられました方々に対し心よりご冥福をお祈りいたします。
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